2018年8月12日日曜日

サバ缶を庇い立てする


近年、安価で栄養価が高いとしてサバ缶(鯖缶)の人気が高まっている。サバ缶は1缶300kcal以上あり、やや高カロリーであるが、地中海式ダイエット(ここでは痩せる方法ではなく、食事法という意味のダイエット)では魚を毎日取ることが勧められており、サバ缶もよい選択肢である。

水煮缶が特に臭い


サバ缶を日常的に利用すると、困るのは、サバ缶の臭いである。サバ缶には、サバの加工の仕方によって、水煮、味噌、醤油、トマトペースト、カレー、オリーブオイルといった複数のバリエーションが有る。

そのうち、水煮缶は最もシンプルで安価で、サバの旨味をダイレクトに感じられると人気があるが、実は食べ終わった缶が臭いという欠点がある。

缶をチャーミーマジカおよびハイターで洗ったとしても、水煮、味噌、醤油缶はくさみが非常に残ってしまう。特に水煮缶は強烈だ。
それに対して、トマトペースト、カレー、オリーブオイルであれば、ハイターにつけることで、臭いはだいぶ取れてくれる。

水煮缶のうち信田缶詰株式会社の水煮缶は、ハイターにつけるまですると、臭いが余り残らないが、ゼロではない。

処理の方法はある


ハイターまで使ったにもかかわらず、缶がなぜ臭いのかを考えよう。缶は単に金属の筒ではない。缶が長期保存できるのには理由があり、缶の内側には薄く塗料が塗ってある。だから、缶の内側は微妙にオレンジがかっているのに気がつくはずだ。

もしも、塗料がなければ、食品の中に含まれる酸で缶が腐食し、缶が破裂してしまう[1]。それを防ぐための塗料こそが、缶が長期保存可能となった鍵である。

サバ缶は、薄く塗られた塗料の中にサバの臭み成分が溶け込み、洗ったぐらいでは臭いが落ちないのだ。

処理の方法として、加熱して塗料ごと焼くのが一番だろう。魚焼きグリルの遠赤外線で熱すれば、臭いはかなり落ちる。パナソニックの家庭用生ごみ処理機で処理したところ、臭いは完全に消えた。しかし、この生ごみ処理機は金属の投入を想定しておらず、説明書では投入しないようにと注意書きがある。

サバ缶の臭いは強烈だが、処理の方法はあるのだ。

参考図書
[1] ジョナサン・ウォルドマン, 錆と人間 (ビール缶から戦艦まで) , 2016

2018年8月9日木曜日

東京医科大学を庇い立てする

東京医科大学を庇い立てする

東京医科大学が激しい批判を浴びている。官僚に便宜を図っただけではなく、入試において状態的に女子・浪人生の入学を遠ざけていたからである。しかし、誰もが進んで不正をしたいわけではないように、東京医科大にもそれなりの理由が想定できる。

1. 規制産業ゆえに、官僚とつながっていたい


東京医科大学は教育機関である以上、日頃から文科省より様々な指導を受けてきただろう。官公庁に悪意のないミスを唐突に指摘され、「改善しない場合は」と脅しをかけられるのは、勤め人であれば立場が上になればなるほど経験することだ。正しく申請を行っても認可が下りるかどうかも、官公庁の人間の胸先三寸で門前払いにされることもあっただろう。

そういった経験を重ねるうちに、官僚とつながっていたいと思うのは、自然な感情であろう。そこに、東京医科大学のスキができてしまったとしても、東京医科大学を責め立てることなどできようか。

2. 医師には応召の義務がある


女性医師が働きやすい職場を作るべきだという声は多い。だが、医師法19条には「第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と書かれている。

これはどういうことかと言うと、医師は夜中であろうが、何かの私用があろうが、患者が求めるならば、診察しなければならないということである。具体的には、医師自身が重病か、豪雪が降り積もる富士山のような物理的に往診できない場所以外では、医師は仕事をしなければならないとされている。だから、医師は休むことは基本的にできなくなっている。

ただし、極端な例でない限りは、他の医師を「当直医師」「救急当番医師」として代理に立っている、そして、自分も「当直医師」「救急当番医師」として努めているならば、自分の睡眠時間を確保することは非難されることではないだろう。技術があっても当直しない医師は、そもそも病院では発言権が皆無だというのが現実であり、都合の良い時間で働ける「働きやすい」場所で働いている医師は、声を上げても「当直」「救急当番」を行っている医師の声には勝てない。

この医師法第19条は、医師がストライキを行って医療が回らなくなるのを防ぐために設計されたものであろう。そういうことはありえないのだが、現在、地方での医師不足が叫ばれるなど「立ち去り型サボタージュ」という言葉が使われるようになた。そうであれば、応召の義務はまさに、今日の問題「立ち去り型サボタージュ」の解決のためにあり、医師が私用を優先するのは非難されうると考えるべきであろう。

そして、この医師法19条は官公庁がFAXで度々病院に「医師法19定により」診療拒否するなと送りつけてくる。病院は方や「働きやすい」を求められ、方や「応召の義務」を官公庁から指摘される。その間に挟まれている病院幹部から「男性医師を中心に」という要望があったとしても、おかしくない。

2018年8月8日水曜日

大塚家具を庇い立てする

大塚家具を庇い立てする


かつて親子間の葛藤で世間を賑わした大塚家具の経営が行き詰まっている。追い出された元社長は嘆き、身売り先とみられるヨドバシカメラは否定的な見解を明言している。
https://www.asahi.com/articles/ASL875GXTL87ULFA01V.html
https://mainichi.jp/articles/20180808/k00/00m/020/143000c

現社長に問題があったのだろうか。私はそうは思わない。

1 家具市場は縮小している


一般社団法人日本家具産業振興会によると、家具の出荷は低迷している。
http://www.jfa-kagu.jp/files/statistics/manufacturing_2002-2015.pdf
出荷が低迷する中で、金属家具の減少幅は低いが、それでも減少していることに変わりがない。

出荷金額が減り、従業員が減っているこの市場から大塚家具が退出したとしても、現行社長の問題だと言い切ることはできない。

2 中古市場がない

オフィス家具の中古市場について経産省が調査したことがある。
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001426.pdf
これによると「安価な中国製の製品の流入により、中古市場が成り立たない」「良質な中古品が手に入らない」という悩みがあるようだ。そういえば、我が家もアイリスオーヤマか山善の製品しか使わないことにしている。

ヨーロッパはどうだろうか。フランスのように不動産だけでなく家具に国がある。そういったところではブランド化しやすい。ところが、日本は資産といえば不動産か車かという社会である。

であれば、大塚家具は何をすべきだっただろう。高級品の中古市場を作るべきだったのかもしれない。
もしも、「このタンスは1600年にOO家からOO家に贈答品として送られ、それ以来OO家で使われていました」「OO国大使よりOOにお礼として送られた家具」という家具が中古で出てくるならば、アイリスオーヤマだらけの我が家でもかなり関心を持つ。大塚家具は高級家具を売るだけではなく、高級家具の中古市場を育てていたら違ったのかもしれない。

六角弘の「怪文書」(光文社新書) Kindle版によれば、怪文書が出てくるときは、経営が破綻する直前という。あの親子騒動を見たとき、あの会社はすでにまずかったのだろう。もっと早くに騒動を起こしていれば、違ったのかもしれない。